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Amaryllis

2012年のある梅雨の季節。

仕事でお邪魔したお宅でアマリリスが生けてありました。

実は私はその時、初めてアマリリスを見ました。

一本の太い茎から3つも大きな赤い顔を出しているその姿に

不思議な花だなぁ、ホンモノなのかな?とさえ思いました。

名前はもちろん知っていましたよ。

小学校か中学校の頃に、リコーダーで吹いた「アマリリス」とか、

大好きな橘いずみちゃんの歌う「アマリリス」とか。

あ、また話が逸れちゃいました。

あまりにそのアマリリスが素敵だったので

そのお宅のご主人に

『後で写真を撮らせて頂けませんか?』

と尋ねると、もちろん良いですよ、と言ってくれました。

しかし、その後、奥様が私のその申し入れを聞いて 『どうぞどうぞ持って帰ってちょうだい』

とベランダにあった鉢植えに残っているアマリリス2本を

躊躇も無くカットして持ってきてくださいました。

ご高齢の夫婦は来月引越すため、鉢植えは持っていかない予定だから、と。

良かったら鉢植えも持って行ってちょうだい、と笑顔で。

私はちょっと驚きながらも、その想いに嬉しくなり、

カットしてくださったアマリリスを頂くことにしました。

数分ほど奥様とアマリリスの立ち話をして、

次の仕事に向かうため帰ろうとした途端、奥様がポロポロと涙を流し出しました。

『優しくしてくれてありがとう…』

と何度も言いながら。

私のほうこそ優しくしてもらったのに、そんな風に言われることに

かなり恐縮してしまいました。

その日私は落ち込んでいました。

何に落ち込んでいたかは今では覚えていませんが、

その奥様の温かい涙と真赤なアマリリスによって

励まされ、力をもらうことができたのです。

そして、実はその奥様には、認知症がありました。

何とか生活はできているものの、日々出来なくなることや

わからなくなることがある自分に対して、

奥様はどう理解して受け止めていっているのだろう。

不安やフラストレーションが表現できない時、

そのストレスはどんな風に心身に影響しているのだろう。

高齢になって住み慣れた家を離れなければならないとは、

どのような痛みを伴うのだろう。

色々な思いが、後になって私の頭の中をグルグルと巡っていきました。

いや、今も時々巡ります。

でも言えるのは、あの時の私の状況とあの時の奥様の状況の中で

何か化学反応が起きたのです。

そしてそれは、私にとって小さな光る宝物になったことは事実です。

見えない大きな愛に包まれて、1人じゃないんだなと、

感謝が込み上げてきた体験。

なので、私にとってアマリリスは、アマリリス以上のものになりました。

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楽しいふり 感じてるふり 迷ってるふり 傷ついたふり わからないふり ふりをするふり 大学もやめてしまった

淋しいこと

悲しいこと

不安なこと

苦しくなること

叶えたいこと

死ぬまで変わらないことひとつ

わかってほしい

(橘いずみ 「アマリリス」より)

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この歌は何の変哲もない日常の尊さを

私に教えてくれるようです。

そんな歌を頭で巡らせながら

ちょっと思い出に浸ってみました。

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